■ Plier ■
電機(電気)屋のメインツールとも言えるのが、この「ペンチ」である。
ペンチというのは日本語であって、英語の「pinch(つまむなどの意味)」がなまった物らしい。
外人に「ペ〜ンチ!」と言っても、まったく通用しない(笑) 英語では「プライヤー」となる。
日本で「プライヤー」と言うと、また別の工具になってしまうのだが、その話は、プライヤーのページで。
余談だが日本で使用される工具の名称は和製英語か造語が多い。
さて、このペンチだが電気屋は絶対に持っているし、色んな使い方をする。つかむ物は電線だけではない。
ありとあらゆる物をつかむ!つかむだけでなく切断もする。
しかし写真のように先端がピッタリと、くっつかないので、あまり細かい物は
つかめない。先端がくっついていない理由は、切断用の刃をぴったりと
合わせるためである。ここがポイントで、この刃の切れ味が、そのペンチの
価値を決めると言っても過言ではない(笑) 写真はボクのペンチをしっかり閉じて
太陽にかざした物だが、この時、刃に隙間が少しでも見えたら X なのだ!
先にも書いたが、切断する物は電線だけでなく、細いひもやロープ
ビニールテープなどもあり、時にはカッターナイフなみの切れ味を要求される。
ペンチを手入れする重要な項目なので、覚えておこう!
ペンチのメーカーも多く存在するが、ボクの業界では昔から品質の良いペンチは「メリー」か「ビクター」と決まっている(笑)
大きさ、種類も非常に多く、人の好みもあって、どれが良いとは一概に言えないが、気に入って使っているのは
メリーの1050H-175である。大きくも小さくもなく、丁度いい。
先端部分を注目して欲しい。ほとんどのペンチは、このようなデザインになっていない。ボクのペンチは
削って独自の加工が施してある。まあ、プラモを改造するのと同じと考えていい。
仕事の経験上、このように尖った形状の方が、より小さい物を狭いスペースでつかむ事ができる。
それに、ガンダムっぽくて、かっこいい!(笑) ちなみに右の写真がノーマルくん。
これは、握りの部分で、これまた削って、薄く加工してある。一番上の写真を
見てもらうと違いが、わかると思う。これも経験上から来た加工で、何かの隙間をこじ開けたり
表面を削ったり、色んな使い道がある。マイナスドライバーでもできそうだが、こじ開ける場合は
強度がなく、曲がってしまったり折れてしまったりするので不向きだ。
その点、ペンチの握りは非常に頑丈で、曲がった物を見た事がないし人間の力では曲げられないと思う。
この1050Hシリーズ、デフォルトでは、枝の部分にゴム製の絶縁グリップがついている。(メリーHP参照)電気屋が使うには
感電防止にもなり、便利とも思えるが、ボクは、この枝の部分で番線などをねじったりするので
柔らかい絶縁グリップは、逆に邪魔なのだ。故に取っ払ってある。
メンテナンスについても少し書いておこう。
ペンチの大敵は水である。焼き入れされてはいるが鉄に変わりなく雨などに濡れると一発で錆びる。
中心のビポッドピンは非常に精密な間隙を保っており、錆びると、とたんに動かなくなる。
あらかじめ濡れる事が予想できる作業は少ないので、濡れた後の手入れが重要だ。
よく水を切り、CRCなどの潤滑剤を吹いておこう。錆びて動きの悪いペンチほど、頭に来る物はない。
外部のサビもワイヤーブラシなどで、磨いておこう。仕上げにマシン油で拭けばスティールブルーの
かっこいいペンチが出来上がる。え?かっこは関係ない?